私の感じた溝なのだ。
私は、自信を持ってきれいにしてあげられる。
心からそう思ったのだ。
だから、すぐに電話で連絡をとり、私の思ったことをそのまま伝えた。
すると、サルサ・ガムテープに関わっているスタッフたちは、その意図をすぐに理解してくれ、快く私の申し出を受け入れてくれたのだ。
コンサートの当日、私はスタッフとともに、メイクをさせてもらった。
女性はもちろんお母さんたちはよほど嬉しかったらしい。
みんな元気な顔になって大いに喜んでくれたのだ。
お母さんたちは、そのコンサートで演奏しているわが子に、誇りを感じたはずだ。
そう思ったお母さんを見て、子どもたちも自信やプライドを持てたと思う。
演奏することの意義や、意味を感じられたと思う。
見た目をちょっと変えただけでそうなるのだ。
私は、メイクの必要性や、メイクの悦びを再認識した。
埼玉医大で性同一性障害の人の手術が行われるなどして、日本でも性同一性障害という言葉が、社会的に認められるようになった。
性同一性障害というのは、特別な原因があったわけでもないのに、気がついたら生まれながらの性に違和感を感じるようになっていた、ということだ。
彼らは、生まれつき顔に異常のある子たちと同じように、なぜ他人とは違うのか、と悩んだはずだ。
しかし、顔に異常のある子たちは、その悩みを親たちも理解してくれるはずだが、性同一性障害の人たちは、その悩みや苦しみを、親にも伝えることさえできなかった人が多いという。
女性の体に男性の心が宿っているFTMは、他人からは「ボーイッシュな子」ということで、特別異端視されることは少なかったと思う。
しかし、その逆である男性の体に女性の心が宿っているMTFは、「男おんな」とか「オカマ」とか言われ、小さいときからかなり迫害されてきたように思う。
いずれにしろ、本来あるべき自分ではない状態を強要されてきたのだ。
そして、彼らは生まれながらの性に違和感を感じることはおかしなことで、自分はどこかおかしいのだと思ってきたのだ。
それも親の責任ではなく、自分たちの責任だと思って生きてきた。
ある性同一性障害の人は、「自分の存在を消してしまいたかった」とさえ言った。
誰にも理解されない苦しさ、自分にとって不自然に感じる体で生きるということは、本当に辛いことだったと思う。
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